「強制執行認諾約款付き公正証書」について
強制執行認諾約款付き公正証書とはなんでしょうか?
分かりやすいように、「強制執行認諾約款」 と 「公正証書」 とに分けて考えていきましょう。
公正証書とは
まず、「公正証書」 についてですが、公正証書とは公証役場で事実や契約行為などの証明・認証を行う公務員である 「公証人」 が作成した文書をいいます。
公証人の多くは裁判官や検察官などの職についていた法律の専門家から選任され、作成された公正証書の原本は公証役場に保管されます。
そして、公証人に公正証書を作成してもらうためには、一定の手数料を支払うことが必要となります。
なぜ公正証書を作成するのか
では、手数料をかけてまで、なぜ公正証書を作成するのでしょうか?
手数料をかけてまで作成する公正証書には、どんなメリットがあるのでしょうか?
分かりやすいように、例を挙げて考えていきましょう。
【 ここに離婚をしようとしている夫婦ABがいるとします。】
【 そして、AとBは、離婚後には、夫Aから妻Bへ、子どもの養育費として、毎月決まった金額を支払うことを約束しました。】
【 ところが、離婚後、BがAに養育費を請求したところ、Aは 「養育費を支払う約束なんてしていない」 と言い出しました。】
困りましたね。
こういうことが起こらないように、約束事は、たとえば 「離婚協議書」 といった書面に残しておく必要があります。
書面に残しておけば、話し合いがつかず、訴訟となったときでも、その書面を証拠として提出することができます。
【 さきほどの元夫婦のABも、結局、話し合いでは決着がつかず、Bは訴訟を起こしてAに養育費の請求をすることにしました。(今度は、ABの間で 「離婚協議書」 が作成され、養育費の支払いもそこにきちんと記載されていたとします)。】
ところが、【 Bは引っ越しなどでバタバタした際、せっかく作成した 「離婚協議書」 を紛失してしまっていました(ケース@)。】
もしくは、【 Bが裁判で 「離婚協議書」 を証拠として提出したところ、Aに 「そんなものはBが勝手に作ったもので自分は知らない」 と言われてしまいました(ケースA)。】
困りましたね。
でも、こういう場合でも作成した 「離婚協議書」 を公正証書にしておけば、たとえケース@のように自分が保管していた分を紛失してしまったとしても、原本が公証役場に保存してあるので安心です。
また、ケースAのようにAが 「提出された離婚協議書はBが勝手に作ったものだ」 と言い出したとしても、公正証書は、公証人という公務員である第三者が一定のルールに則って職務として作成するものですから、Aが自分の主張(「離婚協議書はBが勝手に作ったものだ」)を裏付ける強力な証拠を提示しない限り、そのような言い逃れは通用しないことになります。
さらに、公正証書を作成しておくと 「もし裁判になったとしたら言い逃れできないだろう」 という心理的プレッシャーから、たとえば養育費なりを支払ってもらいやすくなるという効果があるともいえます。
離婚協議書を公正証書にしておくメリットは、このようなところにありますが、これをさらにパワフルで確実なものとするために登場するのが 「強制執行認諾約款」 です。
それでは、次に 「強制執行認諾約款」 とは何なのか、それを見ていきましょう。